『お客様が写真館からのメッセージを受け取る』
葉山:
お二人の話を聞いていると、「写真館はお客様の要望を受け取り、それを写真で返す、というか写真で伝える」というように感じます。
岡垣さんの食事されている写真や言葉を繋ぐ写真、石田さんの遺影の話もそうように感じます。
では、お客様の要望をお客様に十分に返すことができていると思いますか。
岡垣氏:
食事されている家族写真は、材木屋の社長さんで写真に写っている木の器もご自身で販売されておられ、木を主材に建築したクウカホームスタジオでは自分の家にいるような気分だと言われました。
クウカホームスタジオ
好きな道具、好きな食事で、好きな時間を写しとめることとなりました。
家族の写真そのものは9月に開催する写真展で初めて見られることになりますが、既に画像を購入していただきご自身のブログやホームページでアップされて誉めていただいています。お客様は職人かたぎのような人で、直接、言葉で誉めてもらうことはないのですが、すぐに暑中見舞いにこの写真を使っていただいているそうです。多くの人に見せたい、伝えたいと思っていただいているようです。
そして、僕が「お客様には素晴らしいヒントをもらえました」と話すと、「そうか、じゃ、次も考えて来てやる」と応えてくださいました。本当に嬉しい一言でした。
葉山:
「次も考えてきてやる」とは、顧客、リピータになるよと宣言してくださった一言のようですね。
石田氏:
先ほどの神戸のお客様が、またこのような話もされました。「これが今の私なんだね。楽しそうで、いい顔をしていると思います。」でした。
普段の生活ではなかなか自分を客観的に見る機会はありません。鏡の自分でさえつくった自分でしかないと思います。
自分自身を撮られる、大好きな人と一緒に写真を残すことができる。そして、何枚か撮る写真の中で、遺影となる一枚を手元に持っておられる。ご主人も同じようにされている。お子様も一緒に来られるようになった。家族が繋がっているように思えました。
お客様の要望を受けて、お客様に伝えて、また、お客様の要望を受け止めることになっていると思いました。
葉山:
お二人の話を聞いていると、お客様に伝えるという前にお客様に想いを持って来ていただくということが、お客様に伝えるまず一歩だと思いました。そして、その繰り返しがリピート、顧客になっていただくことだと思いますがいかがでしょうか?
岡垣氏:
リピート、生涯顧客という言葉が自分の中にあります。クウカホームスタジオを建てたとき、下図の右側の白い部分をつなげるスタジオとして作りました。
病院と比較したときに普段は薬局などで薬を購入したりしながら自分で対応しますが、いざというときはかかりつけの病院で先生に診断やカウンセリングをしてもらい、心も体も元気になるようにします。
それが今、個人で写真を撮影しフォトブックを作ったりすることとは違うサービスとして、このスタジオでは写真を写すだけではなくお客様に参加していただき「良い写真を撮ってもらったし、すごく楽しかった。子どもたちもまた遊びに行きたい、通いたい」と言われる流れで成人までつなげていきたいと考えています。
来店されたお客様は写真の出来栄えよりも、子どもたちがまた行きたいと言ってくれることが、自分のなかではこれから芽が出て行く一番の財産だと考えています。
普段からお客様と絆や関わりあいがあればあるほど、さまざまな繋がりでお客様からお客様を紹介いただいたり、自然にいい流れが出来ると思います。その最初のきっかけが、さまざまな企画をお客様に提案し、参加してもらうことが大事だと考えています。
石田氏:
家族写真とは写真業界でよく言われる定義ではなく、写真館で撮影する家族の写真も、旅行へ言って知らない人にコンパクトカメラで撮ってもらう 写真も家族写真としては同じだと思います。ただ、見知らぬ人に撮ってもらう旅行の写真は、撮る人と撮られる人の気持ちが通じあっていない。自分達写真館の撮影する家族写真はもっと気持ちの通じ合ったものであるべきだと考えています。
これはismをオープンさせるときに考えていたことです。
今までの写真館は家族の気持ちを聞いて撮るというより、家族で撮る写真だけであった気がします。だからこそ、ismは家族の思いを聞いて撮っていくというような場所にしたい。家族写真を撮ることが大切であるということを伝えていくことが大事であり、お客様が七五三など記念日に写真館にいかなければならないというのは少し違うと思います。