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株式会社 羅針ネット
代表取締役 前保 純
第1回:(株)羅針ネットを立ち上げた想い

 
今回のテーマである「羅針ネットを立ち上げた想い」ついて話させていただきます。

 羅針ネットの基幹技術は「電子的割符」を使った秘密分散型バックアップシステムDAS(DataAliveSystem)です。DASについては、別ページに記載されていますので、それを参照してください。DASは簡単に言えば、データを暗号化した断片に3分割し、それを別々の場所に保管することで、データを安全に保管するという技術です

写真業界から始まった

 実は、昨年の夏にJIPDEC(日本情報処理開発協会)が中心となった総務省の公募実験を縁に、この電子的割符技術に触れ、その可能性について興味を持ったのが、そもそもの起業のきっかけでした。

今回公募実験を行った対象はいわゆる写真業界で、写真館と卒業アルバム制作メーカとの間で、個人情報に当たる写真データを、如何に安全に移動・保管するかというものでした。写真データは、現在すでにデジタル化されており、一般的なスナップ写真でも5MB程度あります。1冊の卒業アルバムを作成するためには、基本の写真は数千枚にのぼり、その中から取捨選択されて、最終的に数百枚程度に絞られ、最終的な卒業アルバムとしてまとめられます。

卒業アルバム用の写真は、長いものでは6年間保管される必要があり、その間にデータの流出や紛失が発生しては困るわけで、写真館の実務的な手間はいや増している現状でした。

データ保管を考える

現実的な保管方法については、頻繁に使用するデータについては、RAIDや単独のNASに保存し、記録性の高いものについては、DVD、BDと言ったメディアに書き込んで保管しているという状況でした。しかし、このような一極集中型の設備は、たとえば写真館が地震、洪水、火事、盗難といった災害、天災、事故などに遭遇した場合、全く意味をなさない場合があります。ではメディアに書き出して、それを別の場所に保管すれば良いかと言えば、災害からそれを守るために、写真館から離れた同時に影響がおよぼさない場所に保管しなければなりません。しかし、日々の業務の中では、メディアにバックアップを取るのだけで手一杯な状況であり、保管先での盗難等にも注意しなければなりませんから、現実的な方法とはいえません。

幸いこれまでは、天災や事故に遭わなかったのですが、将来は解りません。阪神淡路大震災があるまでは、関西人は、「関西では大きな地震はない」と信じていましたが、今そんなことを言う人は誰もいません。地震の脅威はいつ襲ってくるか解らないと、しみじみ感じています。

DAS技術からの答えがある

しかし、DAS技術を使って、元データから3つの暗号化された断片を生成し、1つを手元に、あとの2つを遠く離れた場所にあるデータセンターなどに保管すれば、少なくとも2つの断片が存在すれば、元データを復元出来るのですから、天災や事故からデータを安全に保管することが、極めて簡単に実現できる事に気がつきました。データが命、これを喪失する事がそのまま会社の死を意味する写真館にとっては、いくら手元のディスクシステムにお金をつぎ込んでも解決できない問題を、DASを使えば容易に実現できます。

私は、公募実験を通して、電子的割符を使った秘密分散システムは、非常に有望な技術だと確信しました。そして、これをもっと多くのデータの保管とバックアップに悩んでいるユーザに、安価でより使いやすいシステムとして供給できないかと考え、羅針ネットの起業を決意したわけです。

幸い、このような考えに共感、同意頂ける方々とも知り合え、羅針ネットを設立することがでました。

羅針ネットが見ている先

私は、さらにもっと将来的な展開が、この電子的割符技術にはあると思っています。現状では、暗号化された断片は、各地のデータセンターの中のサーバに格納されるか、離れた本店-支店の様な場所に格納せざるを得ません。しかし、この様に特別な専用スペースを用意するのではなく、個々のネットワークユーザがディスクスペースを持ち合って、一部を他者の断片データを保管する領域として提供し、自分の断片データも同様に他人に預かってもらうような、「持ち合い」型のデータ共用の形もあると考えています。その際は、バックアップ領域としてではなく、自分のディスクスペースが、広く、薄くクラウドの海の中に広がり、クラウドの中で地域的な不具合があっても、多数の冗長化スペースにより、もとのデータには何ら影響をおよぼさない、そんなディスク空間の供給が可能ではないかと考えています。

羅針ネットは、DASシステムの供給また、そのシステムの上で様々なWebサービスの提供を通じて、社会に貢献出来る様な企業を目指してゆきたいと思います。